アバター2を観て感じたこと

映画

はじめに

「アバター」は2009年に公開された、異星の原住民と侵略者である地球人との戦いを描いた映画作品である。ジェームズ・キャメロン監督の作り出す色鮮やかで独創的な世界観で多くの人々を魅了し、興行収入159億円を超える大ヒット作となった。そしてついに2022年、13年ぶりに待望の続編「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が公開された。

「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」(以後アバター2と呼ぶ)の物語の舞台となるのは、前作から10数年後の惑星パンドラである。主人公ジェイク・サリーとネイティリの間には4人の子供(うち1人は養子)がおり、幸せに満ち足りた平穏な日々を過ごしていた。しかし、突如再来してきた地球人によって、パンドラが再び侵略されはじめる…といったあらすじとなっている。

(※以下、ネタバレを含む)
アバター2で重要になってくる新たな存在として、キリが登場する。キリは前作で亡くなったグレイス・オーガスティン博士のアバターから産まれ、サリー家の一員として養子に迎えられるが、父親は分かっていない。

また、キリにはエイワを感じることができる不思議な力がある。

エイワを感じるの。息遣いが聞こえる、エイワの鼓動が聞こえる。すぐ近くに感じる。すぐそこにいて、今にも語りかけてきそう。

キリがジェイクに打ち明けたときの言葉(アバター2)。

草むらに横たわるキリと、キリを中心として鼓動が脈打つように揺れ動く草のシーンは印象的。起こされたキリは「私また気を失っていたのね...」と呟く。自分の意思とは関係なく自然界と深く繋がることができるのだろうか。

「エイワ」とは何か

そもそもエイワとは何か。

エイワが誰かって?唯一絶対の存在、あらゆる生命からなる神だよ。彼らの全てさ。
新人さんには難しいかもしれないけどね(笑)

ノーマンからジェイクへの言葉より(アバター)。

またグレイス博士によると、パンドラの樹は周囲にある10の4乗本の樹と電気科学的なやりとりをしており、それは神経細胞のシナプスに相当するという。人間の神経細胞の数が約1000億個であるのに対し、パンドラ全体には10の12乗(1兆)本の樹が存在している。つまりパンドラの樹々の間には、人間の脳よりも複雑なネットワークが形成されていることになる。

この星(パンドラ)全体が一つに繋がりあって反応している確かな証拠がある。
私はその反応を知能とは呼ばない、むしろ意識と呼ぶのが近いと思う。パンドラのあらゆる生物がその意識と繋がっていて、まるで一つのものとして認識しているみたい!

グレイス博士の録画ビデオより(アバター2)。

グレイス博士の言う証拠とは、パンドラの樹々が形成しているネットワークのことではないだろうか。それが人間の脳と同じシステムを持っているのなら、情報を記憶することができ、自然界に対して何らかの入出力ができる。おそらくグレイス博士はパンドラネットワークに人間の脳と同じ活動を観測したことによって、上記のような発言をしたのだろう。

人間の脳と同じような構成要素を持ち、同じような働きをするネットワークなら、人間と同様に意識が存在していてもおかしくはない。しかもその要素数は人間の脳よりも多くて複雑なのであるから、より高次な意識が存在することも考えられる。このパンドラネットワークから成る創発的特性としての意識を、「エイワ」と捉えているのではないかと感じた。

キリは何者なのか

出生の不思議。自然界と繋がることのできる不思議な力。生き物が大好きな不思議ちゃん…。不思議だらけなキリが今後も重要な役割を担っていくことは間違いない。では一体、キリはどういう存在なのか?

個人的な解釈として、私はキリがイエス・キリストのような存在なのではないかと感じた。つまり神(エイワ)との繋がりを維持したまま受肉した存在である。従ってキリスト同様に、キリも神聖受胎で生まれたために父親が不明なのではないだろうか。

私は当初、以下のように思った。
「惑星パンドラのあらゆる生命からなるネットワークが、「地球人」というウィルスによって破壊されはじめた。それを正常な状態へ戻すための自己浄化作用としてキリが誕生したのではないか。」

しかしそれだと、わざわざウィルスの一部であるジェイクをオマティカヤ族に招き入れさせなかっただろうし(エイワの木の精を介してネイティリにお告げを与えなかったはず)、地球人がはびこる前に動物たちを差し向けて一掃することもできたはずである。

ただ前作にて、戦いに力を貸してとエイワに祈るジェイクに対しネイティリは「偉大なる母、どちらの味方もしない。この世界の命のバランスを守るだけ」と言っていた。ということは、エイワは高次な意識を有していても、あるいは有しているがゆえに積極的に干渉したり、意図的に攻撃することはないのかもしれない。

だとすると、エイワとの繋がりを持つキリの役目は「自然界の繋がりや循環、互いに生かし合うことの重要性を地球人に理解してもらい、命を奪うだけの無意味な争いに終止符を打つ」ことなのではないかと思う。地球人がナヴィやパンドラの自然界を通して、本当に価値あるものが地下の物質資源ではなく、生命の循環やその奥底に流れる真理であると学ぶ。そしてその学びを故郷である「母なる地球」の再生に活かしていく…てきな。知らんけど。

個人的な疑問

残る疑問は、

  • パンドラネットワークの作る意識は「私は私である」という自己意識をもつのか?
    →もし持つのならそれは神という超越的存在だといえる。自己意識を持たなくとも、全ての生命の中に偏在する、根源的な力・エネルギーとも解釈できる。
  • その意識は自然界に干渉することはできるのか?
    →脊髄にある運動ニューロンが筋肉を収縮させるように、樹々の中にパンドラの生物を興奮・鎮静させる物質を出す植物があるかもしれない。それらを使って干渉できるのではないだろうか。
  • エイワの元にいったグレイス博士の記憶を、エイワは共有できるのか?だとすると地球人の記憶や価値観をインストールできたのか?
    →グレイス博士は亡くなる際に「今、彼女(エイワ)と一緒にいるわ」と言っていた。グレイス博士を介して、エイワの意識(ネットワーク)に人間の意識や記憶もインストールされたのか?今まではパンドラの生命との繋がりだけで構成されていたエイワには、地球人の物質的価値観の意識や記憶は経験したことがなかったはず。
  • 地球人というエイリアンが現れたことは、ナヴィやエイワに何をもたらすのか?
    →地球人という新たな存在が入ってくることで、パンドラの生命ネットワークに今までにない経験が蓄積されるはず。それはナヴィやエイワの体験的成長になるのではないか?「闇を知らないと光を理解できない」というように、ネガティブな経験を得ることによってナヴィやエイワがより完全な存在になっていくのに必要な過程になるのではないか。

今後の展開の予想

ーー息子には息子をーー
仲間に被害がでることを恐れて逃げていたジェイクだったが、息子を失ったその悲しみから戦うことを決意する。憎しみを糧に地球人と力で対峙するも、戦いはさらなる戦いを、憎しみは憎しみしか生まないことに気づく。力が解決策ではないことを理解し、愛と許しを学ぶ。

地球人らも本当に価値あるものは物質的なものではないことに気づく。パンドラの生命ネットワーク(エイワ)を参考に、緑豊かな故郷の再建を目指す。クオリッチはスパイダーに出会い、自分もアバターとなってパンドラの繋がりに触れることで価値観が変わっていく。

キリはエイワとともにある自然界の偉大さや尊さを伝えるキーパーソンとして、愛と平和を掲げて地球人とナヴィを繋ごうとする。そしてキリストのように一度は死して、生き返り、再び皆の前に現れるのではないかと思う。

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